スプラトゥーン3のサブのギアパワーの抽選のアルゴリズムは、だいぶ前に明らかになっている。抽選に使う疑似乱数(の内部状態)は抽選以外には使われないため、付いたギアパワーをいくつか観測することによって、それ以降に付くギアパワーを予測する Gear Seed Recovery というツールが存在する。ちなみに「いくつか」は9個前後になる。
これを情報数学的に説明すると、付いたギアパワーを観測することによって得られた情報量の合計が抽選に使う疑似乱数の内部状態(上のツールでは seed と呼んでいる)の情報量を超えると、内部状態を確定することができてそれ以降に付くギアパワーを知ることができる、ということになる。なお、疑似乱数には XORSHIFT32 が使われているので内部状態は 32bit の情報量を持つ。(厳密には 32bit よりほんのわずかに少ない)
得られる情報量の期待値は確率分布によって変化するが、前の記事の確率表から情報量の期待値を計算すると以下のようになる。
情報量 | |
---|---|
付きやすいギアパワーがないブランド | |
ドリンクなし | 3.81bit |
ドリンクあり | 3.47bit |
付きやすいギアパワーがあるブランド | |
ドリンクなし | 3.49bit |
付きやすいギアパワーのドリンク | 3.46bit |
付きにくいギアパワーのドリンク | 3.26bit |
それ以外のドリンク | 3.24bit |
確率分布に偏りが大きいほど情報量は少なくなる。ドリンクを飲むと確率分布の偏りが大きくなるため、情報量は少なくなってしまう。これをもって「ギアパワーを観測する段階ではドリンクを飲まない方が良い」と言っている記事が見られる。
一方で、ドリンクを飲むとギアのケイケン値は 1.5 倍になるため、時間あたりに観測することのできるギアパワーの数は同様に 1.5 倍になり、その増加率はドリンクを飲むことによる観測回数あたりの情報量の減少率を大きく上回る。そのため、観測の時間効率を最大化したいのであればドリンクを飲んだ方が良い。ただし、ギアパワーの抽選が起きたタイミングでどのドリンクを飲んでいたかをメモっておく手間が発生する。
一方で問題もある。観測回数あたりの情報量が減るということはギアをクリーニングする回数が増えるということである。ドリンクを飲まない場合はかなり高い確率で9回観測すれば内部状態を確定できるが、これはギアパワーの枠の数(3つ)の整数倍であり、クリーニングの金銭効率が高い。情報量が減ると9回の観測では確定せず4回目のクリーニングが必要になる確率が高くなる。ドリンクを飲んでいるということは入手するおカネが増えるフードの効果を得られないということでもあるので、なおさらおカネがきつくなる。
一応、ブランドの付きやすいギアパワーのドリンクを飲んだ場合の情報量の減少は 1% 程度と非常に小さいため、おカネを気にするのであればこの手法を取るのが次善の策となる。ただし、この手法を最大限に生かすにはアタマ、フク、クツの3つとも同じブランドのギアについて観測する必要があり、そういうケースはなかなか稀かもしれない。
なお、内部状態を確定させた後に望みのギアパワーを付けるのが本来の目的なわけだが、そのためにドリンクを消費するため、観測にドリンクをあまり使いすぎないように注意しなければならない。
[スプラ3] Gear Seed Recovery の効率の良いやりかた(その2)
前の記事では得られる情報量の期待値を書いたが、それだと効果が分かりづらいので、N 回観測するまでに得られる情報量が 32bit を超える確率を計算してみた。 8 9 10 11 12 付きやすいギア…